ぶんきち日記

前期授業 第6回目 テーマは「スポーツイベントの価値と対価 ③ ブロードキャスティング編」 その1

「イベント・スポンサーシップ」におけるスポンサーシップ効果を、最大限にしていくためには、テレビによる中継放送が欠かせません。もちろん、スポンサー企業の会場内にある広告看板、イベントタイトル表示と一体となったスポンサー企業名やロゴマークなど、「露出」という点における効果がその最大価値ですが、時には、VIKやVIS、つまり大会運営に必要な物品やサービスを提供していることを、テレビ中継中に表示、またはアナウンスされることもあり、テレビ中継によるスポンサーシップ効果は、さまざまな利点を生みます。そして、大会運営の舞台裏であるオペレーションの現場では、そのテレビ中継制作現場をサポートするさまざまな施策が成されています。その実際は、観客席からはもちろん、オペレーションの現場にいても、意外に知られていないことが多いのです。 よく、テレビ中継があるイベントや大会では、その制作現場のすべては、テレビ局さんにお任せでいいんでしょ、と言われます。確かに、中継制作は、テレビ局の制作スタッフによってすべて行われるのですが、その制作環境、つまり、会場設備や臨時ファシリティの利用や準備、カメラポジションの位置の調整、テレビ中継用の仮設制作要件の調整など、イベント・オペレーションの現場と密接に連携していかないと、最良の制作環境を創り出せない案件は多々あるのです。よって、お任せで済めばいいのですが、そうはいかないのが現実であり、もし、スポーツイベントの価値を最大限に高めていきたいなら、テレビ中継制作の現場を知ることなしに、その価値を高めていくことは困難、と断言します。更には、中継のみならず、テレビ局によるイベントや大会に関する様々なプロモーションの波及効果も期待していく必要があり、この点においては、以前にお話ししたイベント広報とも連携して、ここでも最大効果を狙っていかなければなりません。そのために、イベント広報と連携したオペレーション施策を、スポット的にも、恒常的にも具体化していくためのノウハウも必要になります。 テレビ中継に関する技術、運営、業務特性を知らずして、イベントや大会の成功はあり得ないのです。そして、テレビ中継局は、イベント・オペレーション・サイドの重要なパートナーである、という認識が大事なのです。 しかし、イベントや大会を運営する人たちの中に、テレビ中継制作側と一緒になって、その制作現場を調整できる人材は、実はなかなかいません。イベント・オペレーションとブロードキャスティング。オリンピックを頂点にして、大なり小なり、大会期間が長いもの、単発のものなど、さまざまなケースがありますが、何れも、オペレーションサイドに立つテレビ中継側とうまく調整できる人材の存在は不可欠です。時に、テレビ放送権との関係で、権利関係に関わる要件の調整も強いられることや、技術要件に関することで、高度な専門知識を要求されることもあります。ちょっとしたことで、テレビ中継制作側の意図しないところで、イベントや大会本体の運営に大きな悪影響を及ぼす案件が発生することもあるので、かなり重要なポイントです。また、国際大会などでは、インターナショナル・フィード、つまり世界各国にテレビ映像と音声を送るための国際信号(国際映像+国際音声)の制作を担うホストブロードキャスターが存在します。オリンピックやFIFAワールドカップなどの世界的な国際イベントでは、主催する国際連盟が、独自のクルーを構成して制作体制を作る場合もありますが、単独競技の場合、開催国内のテレビ放送権を持つテレビ局が、このホストブロードキャスターも同時に担当する場合が一般的です。先月行われたFIFAクラブワールドカップでは、テレビ放送権は日本テレビが持っていますが、日本開催の場合は、この日本テレビがホストとなり、世界各国に国際信号を配信しています。フィギュアスケートのワールドグランプリファイナルや世界選手権では、フジテレビ。世界陸上では、TBS。世界水泳では、テレビ朝日。世界卓球では、テレビ東京、といった具合です。 スポーツ競技によっても、その中継制作体制は大きく異なります。競技の特性やルールなどの知識も必要ですが、競技によって個々必要な技術やカメラポジションなどの体制作り、ケーブリングや電源の確保、連絡などに使用する通信回線や国際信号用の伝送回線の管理と維持など、非常に専門的な分野に至るまで、細かく要件を把握していないと、うまくオペレーションの現場との調整が出来ません。特に、デジタル化している制作機材や各種回線への対応、小型化したカメラやマイクの設置要件など、アナログ時代には全くあり得なかった技術も多々あり、そこは日々勉強するしかありません。更には、体操や陸上競技では、複数の種目が同時に行われているので、中継局は、それを1本の国際信号にまとめて世界に配信していかなければなりません。これをインテグレーテッド・ピクチャー(略してインテ)と呼んでいますが、単発競技の制作と並列した独自の設備で制作を行うため、これらの競技では、かなり制作体制が大きなものになります。テレビ制作に関する専門雑誌で「放送技術」という月刊誌があるのですが、大きなスポーツイベントがあった際には、その中継現場の様子がレポートされているので、かなり参考になります。 月刊誌「放送技術」では、海外でのイベントや大会の日本向けのテレビ中継についても取り上げられています。日本のテレビ局のクルーは、こうした海外での大会開催の際には、何か月も前から現地でさまざまな交渉や調整を強いられていますが、この交渉や調整の前面に立っているのが、大会組織委員会などのテレビ制作担当者のみならず、会場の運営を統括する担当者です。現地のプロダクション会社やリース会社との直接交渉も多々あるようですが、大会本体の運営に即した準備をしなければ、最良の中継体制は整えられません。時には、現地の民族性なんでしょうけど、意外にゆったりしすぎていたり、リクエストしたものがきちんと用意されていなかったりと、日本では考えられない苦労があるようです。そして、これは、逆もまた真なりで、日本における大会開催の際には、海外のライツホルダーから、同様のプレッシャーが日本の運営サイドにかけられることを肝に銘じておかなくてはなりません。準備の精度に問題がなければ苦労はないのですが、そこは、テレビ中継制作だけのノウハウでは賄えず、イベント・オペレーションに関するノウハウも絶対に必要になるのです。 私がテレビに関する業務に接してきたのは、広告代理店の営業として、テレビ番組の番組提供スポンサーのセールスをしていたことに始まり、いくつか番組の企画や制作にも関わってきました。すべてはスポーツ関連ですが、特別番組あり、週一のレギュラー番組ありと、いろいろ多岐に渡ります。もちろん、NBAの日本での公式戦に関連して、当時中継局を担当していただいたテレビ東京やテレビ朝日のスポーツ局の皆さんには、非常にお世話になりました。それが縁で、その後もいろいろと助けていただきました。中継制作という点に関しては、やはり、NBA公式戦の現場で見聞きしたことが、いまでもノウハウのベースになっています。私は、ブロードキャスティングの直接の担当ではなかったのですが、会場のオペレーションやスポンサーシップを担当していた関係で、民放局ですからかなり接点が多く、また、伊藤忠商事のNBA担当チームには、過去、NHKのオリンピックの中継現場で担当されていた方が、NBAのブロードキャスティング担当者のカウンターパートであったことから、その方の後ろでさまざまなことを学びました。時代はまだアナログの時代でしたが、全米に生中継されるということで、先に述べた国際信号の伝送、とは言っても当時は衛星伝送だけでしたが、キャリアと呼ばれる通信会社さんとの交渉から、テレビジョン・コンパウンドと呼ばれる制作設備や中継車の留置き位置の設定、カメラポジションの設定からケーブリング作業など、特に1996年の東京ドームの時は規模が莫大でしたから、いまの学生くん並みに驚きの連続だったことを思い出します。その時の様子がまだ映像として頭の中にあるので、最近経験した国際大会の諸々は、あまり苦になりません。・・・・・というか、デジタル化したお蔭で、中継制作の現場がかなりコンパクトになったため、システムの概念にしても、必要機材の中身にしても、非常に理解が楽です。NBA様々です。 ところで、制作とは関係ない話なのですが、授業でスポンサーシップを教えていることで、どうしてもテレビ広告というものを理解させねばならぬ、と思い至り、その業務の中身もできるだけ具体的に話しました。私自身も、NBAの仕事をしていた時は、スポンサーシップを担当していた関係で、ほぼ一人で、提供クレジットの指定から、CMローテーションの策定まで、全部やっていましたので、テレビ局にCM素材を入れるまでは一通りのことを理解していたつもりです。いまではデジタル送稿になっていて、むかしのアナログ時代の現場は見る影もありませんが・・・・・。そこで、番組提供の仕組みやCMローテーション、また、どのタイミングでのCM放送が効果的に最良なのかとか、これくらい知っているだろう、というレベルで親切丁寧に説明しました。しかし、それでも学生くんたちは?????。どうしたらいいんだろうか?。これは授業を1回分潰して、テレビメディア講座をやるしかないですね。ドラマ1本見せながらやったら、効果的かも?。 スポンサーシップとテレビ中継は、スポーツイベントには欠かせない重要な関係性があります。ただ、その中身を具体的に説明しようとすると、当然、イベント・オペレーションとの絡みのすべてを理解させる必要に迫られます。実は、そのイベント・オペレーションにこそ、スポーツイベントの価値を最大化するノウハウがあるのですから・・・・・。ということで、次回は、授業の内容を追いながら、その辺のお話しを・・・・・。 1 2 3

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  • posted by umekichihouse
  • 2014/01/16 01:16

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